2017年12月4日月曜日

済州の教育シンポジウムにて講演しました

121日、韓国・済州の教育庁のご招待により、「Jeju International Symposium on Education 2017」にて講演をさせて頂きました。
















済州(道)は、アメリカの州のように、特定の分野において高度な自治権を認められています。
教育もそのひとつで、グローバル教育や国外の学校誘致に力を入れているのが特徴的です。
今回のシンポジウムも、済州と世界を照らし合わせながら、教育の未来を考えようという趣旨のもとに開かれました。

私は、日本での国際バカロレア(IB)導入事例を主にお話させて頂きました。
ご存知の通り、日本では2020年までにIB認定校を200校以上に増やすという方針をたてており、一条校でのプログラム導入も進んでいます。また、日本語DPIBのディプロマプログラムを日本語で受けることができます)も開発・導入され、国内での更なるIB普及の素地が着実に出来上がってきています。
韓国では、済州を含め現在12の学校が認定校となっていますが、すべて私立のインターナショナルスクールです。インターでの導入ももちろん重要なことですが、公教育でIBを導入することには、また違った大きな意義があります。自国の歴史や地理、慣習などをしっかり学びながら、同時に国際的な教育も受けられること。私たちが日本で展開するキンダーガーテン・アフタースクールでも基盤としている考え方ですが、自身のアイデンティティを確立した上でグローバルな視点も持てるということは、生徒にとって非常に有意義であり、その国の教育を発展させていく上でも大きな強みになるのです。済州でも公教育でのIB導入がいよいよ本格化段階にあるため、このシンポジウムにも教育界からたくさんの方が集まっておられ、大変熱気のある会となりました。

今後も共により平和な社会を創造する教育を目指していければと思います。

この度はあたたかく迎え入れて下さり、ありがとうございました。

2017年5月12日金曜日

世界中の高等教育への進学を視野に。「アカデミックコース」開講!!

東京インターナショナルスクール アフタースクールでは、この4月から「アカデミックコース」を開講しました。
こちらは、所定の英語レベルに達している小学5年生~を対象とした、「より高度な英語力とグローバル・スキルの習得」を目指すコースで、
同アフタースクールで小学4年生までのカリキュラムを修了した生徒も多く通っています。

授業は
・週2回の通学(放課後)
・週1回の「チュートリアル」:ITデバイス上での個別指導
・ホームワーク
で構成されています。
特に「チュートリアル」では、各生徒は専用のタブレットPCを用いて、自宅からカリキュラムに参加するため、
ITスキルやスケジュール調整などの「自己管理能力」も求められます。



このコースを始めることになったのには、大きく2つの理由がありました。
1つは、小学4年生まで当スクールで学んだ生徒たちに、その後も学びを深める機会を提供するため。
そしてもう1つは、目まぐるしく変化するこれからの時代に、探究心をもって生涯学び続けることのできる
21世紀型の学習者」を育む場をつくるためです。

今の子どもたちは、社会に出る10年後・20年後はおろか、3年先の予想ですら容易でない世の中で、進路や職業を選択していきます。
その中ではやはり、自分と周りのことを理解し、考え、行動するために学び続ける力が必要とされるでしょう。

アカデミックコースでは高い英語力だけでなく、その生涯学習者としての姿勢を育みながら、高校1年の終わりには、
「自分の得意分野を把握し、どんな形で社会貢献していきたいか、自分で決められるようになること」を目指します。
そして卒業までの2年間は、その分野を極めるためにどんな高等教育を選択できるか、世界中の教育機関を視野に入れながら
アドバイスをしていく予定です。

初年度の今年は南麻布校のみでの開講となりましたが、今後はITデバイスを用いて場所を問わず参加できるようなスキームも
考えていきたいと思っています。

開講からの1ヶ月で、生徒たちは期待以上の自己管理能力を発揮しており、十分な手応えを感じています。

好きなこと、得意なことを通じて社会貢献できる人材を育てるこのコース。
生徒たちのますますの成長が楽しみです。

2017年4月4日火曜日

国際バカロレア世界会議、日本初開催!

先日のブログでもご紹介したとおり、去る329日から31日までの3日間、パシフィコ横浜にて
「国際バカロレア世界会議(IB Global Conference, Yokohama, Japan 2017)」が開催されました。
日本での開催は、これが初めてです。














日本でこの会議を開催することはかねてからの念願であり、3年ほど前から誘致活動を行なっておりました。
その集大成となったこの3日間には、33カ国から、なんと1,500名を超える皆さんにご参加いただきました。













開会式では、秋篠宮殿下、妃殿下のご臨席を賜り、素晴らしいご挨拶を頂戴いたしました。
お成りの際のお迎えやご案内、お隣にてご質問にお答えする大役を頂けたことは身に余る光栄です。

黒岩神奈川県知事、樋口文部科学大臣政務官からもあたたかい励ましのスピーチを頂きました。
またIBを率いているラップ理事長やシバ事務局長も、この会議に感銘を受けたと仰ってくださり、
今後も日本とますます関係を強化していくことを約束してくださいました。

今回は日本の大学を紹介する機会も多く設け、日本の教育者と世界の教育者の交流の場にもできたかと思います。
この3日間が、日本の教育がさらに進化していくための一助となれば幸いです。

○国際バカロレア日本大使に
そしてこの度、国際バカロレア機構より「IB Japan Ambassador(国際バカロレア日本大使)」という役目を拝命しました。
これにより、今後はアジア太平洋地区のみならず、米州、欧州、中東、アフリカ等との関係も深めていけると思います。

今後も精進して頑張ります。

2017年3月13日月曜日

国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議

 このたび文部科学省にて、「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議」が開催されました。
私は委員として参加しています。

















 この会議は、日本の教育政策を俯瞰する中で、国際バカロレア(IB)の役割を見直し、今後の課題を整理して、必要な方策を検討していこう、というものです。
今回は第1回ということで、国内IB校(前回のブログでご紹介した高知県教育委員会や、都立国際高等学校、広島の英数学館高等学校などです)における取り組みの現状をヒアリングするとともに、私からは国際バカロレアについての最新のトピックスと、今後の課題をお話ししました。

IBアジア太平洋地区大会が日本で開催される意義

 IBに関する最新のトピックといえば、特に大きな話題は、この3月末に、国際バカロレアのアジア太平洋地区大会が日本で初めて開催されることです。世界から1,250名以上の教育者が来日します。

 日本の教育が世界に向けて開かれていくことは、日本の教育発展に欠かせないと考えています。
言わずもがな、日本の基礎学力は世界から見ても高い水準にあります。また、私が日本の教育でとくに素晴らしいと感じているのは“利他的”な観点があることです。おもてなしの文化が根底にあり、幼い頃から学校生活の中で配膳や教室・トイレ清掃などの「係り」を当たり前のように受け持つ、そんな環境で教育を受けた日本の子どもたちには、人を気遣い、人と協力する力が自ずと身についています。

 一方で、日本の教育にまだ不足していると感じるのは、「自信を持って自分の考えを発信していく力」と、「英語をコミュニケーションのツールとして使いこなす力」です。これらは椅子に座って問題集を解きながら知識を詰め込んでいくだけでは身につきません。

 文部科学省でも、次期学習指導要領が目指す教育の姿についての言及の中で、課題の発見と解決に主体的・協働的に取り組む「アクティブ・ラーニング」を取り上げていますが、IBにおける教育はこのアクティブ・ラーニングに符合しており、先ほど挙げた2つの力の鍛錬にまさにコミットするものとなっています。従来の日本の教育の美点と、アクティブ・ラーニングのモデル校ともなり得るIB校の特長が互いに作用すれば、この国の教育は新しい段階へ進化していけるはずです。

 近い将来、世界のIB校を卒業した生徒が日本の大学に留学できる、したいと思える、そんな環境になっていたらとても素晴らしいと感じます。今回のIBアジア太平洋地区大会の日本開催が、そんな将来への手がかりとなることを期待しています。

 他にも、グローバル人材育成に向けた取り組みが多方面で行なわれます。私も今年度に続いて2017年度も、兵庫教育大学大学院の客員教授をお受けすることが決まりました。引き続き精力的に活動してまいります。

2017年2月28日火曜日

公立の中高一貫・国際バカロレア校が、高知県で誕生します

去る226日、「高知県立高知国際中学校・高等学校」の学校説明会(高知県教育委員会主催)にて講演をしてまいりました。
この学校は、公立の中高一貫・国際バカロレア(IB)校として、地域や社会、世界とつながる架け橋となるべく、
中学校は20184月、高校は20214月に開校します。

公立の、日本語を主な教授言語とするIB校といえば「札幌市立札幌開成中等教育学校」が先駆けで、現在MYPの候補校として授業を実施しています。入学倍率も初年度は10倍以上に及んだ、大人気の学校です。公立校のIB導入への期待は高まる一方ですが、高知国際中学校・高等学校はそれに次ぐ公立の中高一貫校となります。

今回の説明会には500名の定員のところ、初日に900名超のお申し込みがあり、当日も会場から溢れてしまった方にはモニターで講演を見ていただくほどでした。高知の皆さんの関心・期待の高さがうかがえます。

















坂本龍馬を産んだ土佐、高知は改革の精神が今でも生き続けているように思います。
基礎学力が高く、特別活動等で利他的な共生の精神を養う日本の教育と、世界標準の国際バカロレア教育の融合により、
ここ高知から、四国を、日本を、そして世界を「より平和に」「より良くする」人材が輩出される事を考えると胸が踊ります。

子どもたちがこういった教育を「公教育」の場で受けられる事は、本当に素晴らしいことです。
教育委員会の皆さんのご努力と心意気を心より尊敬申し上げます。高知の皆様も、どうもありがとうございました。

なお参加希望が多数あったので、320日に2回目の説明会を実施することが決まりました。
私も駆けつける予定です。2月にご参加いただけなかった皆様とはその時にお目にかかれること、楽しみにいたしております。

今回の講演会は日曜日の開催でしたので、高知へは次女と一緒にお伺いしました。
彼女は東京インターナショナルスクールでIBPYPMYPを、そして横浜インターナショナルスクールでDPを学び、IBの全課程を修了しました(世界でもまだ珍しいことです)。そしてその中で自分のやりたいことを見つけて、オーストラリアの大学で動物学を学んできました。今は帰国し、次のステップのための準備をしているところです。





















2人で訪ねた高知城は素晴らしかったです!

2017年2月24日金曜日

IBのCEOシバ・クマリ博士、4年ぶりに来日しました

先日、国際バカロレア(IB)のCEOであるシバ・クマリ博士が4年ぶりに来日し、
私は日本におけるIB推進の旗振り役として、色々な面談や学校訪問などにご一緒してまいりました。

○「IB認定校200校」に邁進
今回彼女が来日した主たる目的は、日本でのIB推進プロジェクトの進捗状況の確認でした。
教育委員会の皆さまにも各地からお集まりいただきましたが、皆さんが大変なご努力をしておられることにシバも感激しており、
また文部科学省副大臣や統括官ともさらに協力関係を強化する、といった話もありました。

















ご存知のとおり、文部科学省はグローバル教育改革の柱として、2020年までに日本国内のIB認定校を200校以上増やすという閣議決定をしています。世界全体では現在4,677校の認定校がありますが、日本でも認定校、関心校、候補校を含めるとなんとか104校まで数を伸ばす事ができました。あと半分といったところです。

○IB推進校への訪問
そして、筑波大学附属坂戸高等学校(数週間前に無事に認定されました)と聖ヨゼフ学園(小学校、PYPの申請中)の二つの学校にも訪問しました。どちらの学校も、生徒たちが主体性をもって楽しく学んでいる事が嬉しかったです。大変歓迎してくださり感謝いたします。

聖ヨゼフ学園の校長先生にお聞きしたところ、保護者の方からは「今までテレビでアニメをみていたのに、今はニュースを見たがる」「デパートに連れて行くとおもちゃ売り場ではなく本屋に連れて行ってくれと言われる」といった声が寄せられているそうです。それまで授業に積極的に参加しなかった生徒が、自ら手をあげて主体的に参加するようになり、授業が楽しいと言っている事が一番嬉しい、という声もいただきました。


















今後もシバとも協力をしながら、日本におけるIBの発展にさらに寄与しようと思います。

2017年2月21日火曜日

世界のUWC(IB認定校)に派遣する奨学生の審査会がありました

先日、理事を拝命しているユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)日本協会の、来年度の奨学生の審査会がありました。

UWCは、世界各国から選抜された高校生を受け入れて、国際感覚豊かな人材を育成している民間の教育機関で、イギリスやシンガポール、アメリカなど世界12カ国で、国際バカロレア認定のカレッジ(高校過程であるDPコース)を開校しています。

日本では経団連がUWCの理念に賛同し、UWC日本協会を通じて毎年24名の高校1年生を奨学生として2年間、UWCのカレッジに派遣しています。

今年は日本全国から119名の高校1年からの応募があり、第1次選考を経て45名が第2次選考に進みました。私は選考委員として、ここから24名を選考する審査会に参加したのです。
















審査会はなんと11時間にも及びました。

というのも、試験を受けた生徒は皆さん、大変志が高く素晴らしい人材で、全員を合格にしたいほどだったからです。

英語力についても、皆さん先日このブログで紹介したヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR/Common European Framework of Reference for Language)B1レベルをクリアしていました。2割程度が帰国子女、1割程度がインターナショナルスクールに通っていた生徒でしたが、全く海外に行った事もない生徒も1割程度いたにもかかわらず、です。

合格した皆さんは、世界中から選抜された優秀な高校生とともに、しっかりとDPコースを学び、卒業後は日本を含め世界中の素晴らしい大学で、学びを深めていってくれることでしょう。選考にもれてしまった生徒たちも、ここまで来られたことはきっと良い経験になったと思います。皆さん、本当に頑張りましたね。

このような生徒たちを見ていると、日本の未来はきっと明るい未来になる、と心より思います。

2017年2月13日月曜日

SENIAよりHonorary Advocacy Awardをいただきました

今日は嬉しいニュースがあります。
SENIA(Special Education Network in Asia/アジア特別支援教育ネットワーク)より、Honorary Advocacy Award(名誉賞)をいただきました。
日本人として初めての受賞で、光栄に思います。
特に特別支援教育の分野における活動に対して評価をしていただいた事がとても嬉しいです。

2000年にNPO インターナショナルセカンダリースクール(ISS)を設立して運営してきました。
主として自閉症スペクトラムなどの発達障害や学習障害、いじめなどにあった社会的な問題を抱えた中高校生の小さな学校です。

今年も41名、19カ国の生徒が元気に通学しております。生徒たちは、居場所をみつけて学校のことを
We are a big family!!」と言ってくれています。


そしてこの度、教育再生実行会議のメンバーとして一生懸命取り組んだ、障害に応じた特別な指導
(通級と呼ばれる子どもにあった個別の指導)のための教員を増員し、公立の学校に安定的に配置するための法改定も閣議決定されました。
早ければ、今年の4月から始まります。


これからもできる事を一つずつ、一生懸命やっていこうと思います。

会場の様子

















お祝いに駆けつけてくれたISSの教員達

















いただいた表彰状












2017年2月2日木曜日

2020年度から始まる大学入学審査で求められる英語力



○入試改革に先駆けて上智大学が導入した英語試験「TEAP(ティープ)」とは?

大学受験シーズンを迎え、受験生と保護者の方は緊張する毎日をお過ごしのことと思います。一方で「一発勝負」の現在の大学受験システムもあと3回。4年後に大学受験を迎える今の中学2年生からは、新しい入試システムがスタートします。


どんな試験に変わるのかはまだ検討中の段階ですが、英語力の審査に関しては、現在のところ既存のいくつかの検定試験の結果を提出することで代替えすることになりそうです。こうした動きに先駆けて、日本英語検定協会(英検)は大学入試に活用できる「英語外部検定試験」TEAP/ティープを開発しており、すでに上智大学では入学試験に採用しています。


TEAPとはどんな試験なのでしょう。サンプル試験がWeb上で公開されているので確認することができます。これを見ると、英語4技能(読む、書く、聞く、話す)のみならず、思考力・判断力・表現力が問われることがわかります。


TEAP CBT スピーキングテスト デモムービー>




○一般的な大学入学に求められるのは、「CEFR」の「B1」レベル

また求められる英語のレベルとしては、一般的な大学ですと、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR/Common European Framework of Reference for Language)B1レベルとなりそうです。


B1レベルとは、「仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作る事ができる」というレベルです。


具体的には、前述のTEAPのサンプル試験のスピーキングビデオに登場する受験生の英語力が、B1レベルを少し超えた程度です。


このレベルに到達するには、日本語話者は2,000時間から2,750時間、能動的に英語に接していなければいけません。一方、初等~中等教育においての英語の授業数は学校によって若干の差はありますが、平均して800時間、英語に力をいれている学校でもプラス100200時間程度といえます。つまり残りの1,000時間から2,000時間は自己努力とならざるを得ないのが現状と言えます。



保護者のかたは、子どもの進路を見据え、この『必要な絶対時間数』をどう子どもに提供していくのかを考える必要があります。